伊藤潤二 自選傑作集 歪

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伊藤潤二さんの自選傑作集の1作目がありましたが、今回はその2です。 こちらも1作目同様面白い作品があります。

 

 

それでは、ストーリー概要です。

【首幻想】

ひょんな事で親友の中島を○害してしまった押切。
中島を庭に埋めているとふと異変に気づく。

死んだはずの中島の首が異常に伸びているのだった。
そこから逃げ出し、あれは幻覚だったと自分に言い聞かせる押切。

学校では、中島が行方不明になったことを心配する友人で中島に好意を抱いていた堀田が押切の元へやって来る。そして、堀田は行方不明になる直前押切と一緒にいた事を見たと言うのだった。

押切はあれは従兄弟で中島じゃないと嘘をつく。
すると突然堀田の首が伸びて…

・ひとこと
初期の作品。
普通の人が思い浮かばないストーリーを考え出す伊藤潤二さんのなかでは割と直球な話。
自作解説はホラー漫画家として気をつけなければいけない事などが書かれている。

【いじめっ娘】

裕太郎は栗子にプロポーズをする。

だが、プロポーズに乗り気でない栗子。
これから自分が話すことを聞いた後でも本当にプロポーズするのかと尋ねる。
裕太郎は自分の気持ちは変わらないと言う。

栗子と雄太郎は幼馴染で、昔よく公園に来ていた。
栗子は裕太郎が好きだったが周りの男友達がそれをからかうため、裕太郎も栗子を避けていた。

そんな時、栗子より小さい直くんと呼ばれた男の子が公園に遊びにくる。
引っ越してきたばかりで遊び相手がおらず直くんの母親に遊んでもらえないかと頼まれ栗子は一緒に遊ぶようになる。

直くんは栗子のことが気に入りとても懐くようになる。
ただ栗子は裕太郎の事が気になるも、公園に来るたびに直の面倒を見る羽目に。
ある日、直に我慢出来なくなった栗子はイタズラをする。

意地悪をすると直が来なくなると考えたが、次の日も直はやってくる。
するとどんどん意地悪がエスカレートしていき、ついには栗子が直に大怪我をさせてしまうのだった。

栗子はその思い出を後悔していると、裕太郎に告げた。
裕太郎は子供の時の話だと言う。

だが、栗子は話には続きがあると。
栗子は大人になってから偶然直に出会い、そして告白されたと。
そして今は直の事を愛していると言うと目の前に直が現れる。
そして直と栗子は裕太郎の元を去っていき…

・ひとこと
予想できなかった終わり方。
また、この話はHunter×Hunterのビスケのモデルと言われているらしい。
親が読むと自分の子供がこんな目にあったら…となるだろう。
親となった今これを読むととても悲しくなった。

【墓標の町】

引っ越した親友の泉へ会いに行くために車で旅行に出かける兄妹。
転居先な不思議な町という泉の話に興味を覚えつつ長時間の運転をする兄。

もうすぐ着くというところでふとよそ見をしてしまい女性を車で轢いてしまう。
倒れた女性を車に担ぎ込み病院へ急ぐも、その女性は途中で息絶えてしまい…

そのまま泉のいる町へ向かう2人。
その町には道路のど真ん中や、その他、至る所にに墓標が立っていた。

車を墓標にぶつけ立ち往生しているところ村人に助けられる。
村人曰く、この墓標は村人が亡くなった場所に自然と現れるという。

そして泉に会う兄妹。
泉の自宅にも墓標が。
村を案内する泉によると、その場で亡くなった人(動物も)を動かしてしまうと成仏出来なくなるという。

自宅に戻る泉たち。
すると泉の両親が慌てている様子だった。
泉がなぜかと尋ねると、妹のあゆみがまだ帰ってこないという。

泉に妹のあゆみの特徴を聞くと、朝に轢いてしまった女性と全く同じで…

・ひとこと
これぞ伊藤潤二ワールドといった作品。
後味が悪いが話としては非常に面白い。

【うめく排水管】

学校の帰りに姉の清水令奈はクラスメイトの滑井に待ち伏せされていた。
滑井は令奈に好意を抱いているが、令奈は不潔な滑井に嫌悪感を示す。

清水一家(母・姉・妹)は潔癖症の一家で、特に母親は病的なほどの潔癖症。 
清水一家の性格はかなり横暴で、母親はお手伝いや配管修理の業者が部屋を汚くすると罵るほどに怒る性格だった。

そんな性格と潔癖症のせいで近所付き合いもなかった。
ある日、令奈が下校中後ろから誰かに呼びかけられる。
振り向くとそこには母と離婚した父親が立っていた。
娘と話をしたい父親だったが、令奈はヨレヨレの見た目の父親を嫌がり帰るのだった。

一方妹の真里は下校中に滑井を見つけ声をかける。
からかうつもりで家の前まで連れて行くと、不潔な滑井をみて母親が怒り狂い卵を投げつけるのだった。

ある夜、家に誰かが忍び込むのに気づいた母親が相手をバットで殴るとそれは別れた夫で、当たりどころが悪く死なせてしまう。

それから、毎日家では配管が詰まり、不気味な音を立てるようになる。
真里はその音が父親が苦しく声だと言い出し…

・ひとこと 母親や姉妹が不快(特に母親)。
終わり方が予想出来ない。
相変わらずぶっとんだストーリーだなと思いつつも、自作解説を聞くと、なるほどそういう訳でこうなったのかと納得。

【耳擦りする女】

資産家、山東茂樹の娘まゆみは自分では何一つ決めることが出来ない特異な性格の持ち主。
何をすればいいのか?どっちにいけばいいのか?全て誰かに決めてもらう必要があった。

そんな性質のため、彼女の付き添い人は耐えられず、すぐに辞めて行くのだった。

ところがある日、求人をみた内田美津という女性が付き添い人を申し出る。
内田美津は最初は戸惑いつつも、まゆみに指示を出し続ける。
茂樹が驚くくらい美津はまゆみの付き添い人をやり遂げるのだった。

しかし、美津の仕事ぶりは目を見張るものの、彼女は見るからにやつれていた。
茂樹は心配するものの美津はやりがいのある仕事で続けたいと申し出る。

ところが茂雄はある日突然美津の訃報を耳にする。
美津にはヒモの彼氏がいて暴力を振るわれており、それが死因だった。
この仕事も給料がいいので彼氏に強制されられていたのだった。

美津の死を聞き、茂樹はまゆみのこれからを心配する。
訃報を伝えにまゆみの元へ行くと、まゆみは不思議そうな顔で「美津はここにいる」と言うのだった…

・ひとこと
かなり好きな話。
どうしてこんなストーリーが思い浮かぶのか謎。 
あとまゆみの子がすごく可愛い。

【なめくじ少女】

おしゃべりで有名だった友人の夕子が急に無口に。
たまに話すことがあっても、舌足らずのような呂律の回っていないようだった。

そして夕子はとうとう学校も来なくなる。
心配した利恵が夕子の元を訪れるもひどく怯えた様子で心配する母親も追い出してしまう。

翌日も利恵が夕子の家に訪問すると母親がうろたえた様子で家から飛び出してくる。
どうしたのかと尋ねると、母親は「夕子の舌が…」と。
すると夕子が現れる。
口を開けると夕子の舌がナメクジになっていて…

・ひとこと
これもぶっ飛んだ話。
特に後半の展開があるいみ無茶苦茶だが、それを変と思わせない雰囲気があって面白い。
ただ、伊藤潤二さんが元歯科技師ということを考えると、このアイディアが出たのはなるほどなと思う。

【肉色の怪】

滝川百子は幼稚園の帰りに突然奇妙な液体をかけられるという災難に遭う。

幼稚園のクラスにはチカラという問題児がいて、他の生徒によく暴力を振るっていた。
さらにチカラは癖で壁紙や絵を破ることがあった。
チカラ曰くこれは「剥がしている」という。
チカラは怪力で皮膚が薄く、周りが怖がる風貌をしていた。

叔母がチカラを迎えにやってくる。
百子はチカラの行動は親の愛情不足と感じその事をはなし、家庭訪問をすることに。

チカラの家に着くと、お風呂を浴びたばかりという母親が出迎える。
百子は母親と会話を交わすも、ほとんど表情を変えない母親の雰囲気に圧倒される。

そしてとうとう、チカラが別の生徒に大怪我を負わせ退園させられる。
チカラはそれでも次の日も幼稚園にやってくる。
家に帰りたくないというチカラは百子の家へ付いてくるのだった。
父親が医者でチカラの皮膚を見ると指紋まで消えかかるほど薄くなっていると言う。

百子はチカラを自宅へ連れ帰りと、またお風呂上がりの母親が出迎える。
母親にチカラ皮膚の事をいうと「そのうちきっと綺麗な子供になる」というのだった。

ある日、百子が帰宅途中に女性が液体をかけられる現場を目撃する。
犯人を捕まえるとそれはチカラの叔母だった。

百子はなぜこんな事をするのかと問い詰めると、チカラの母親はある「美」にとりつかれていると話す。百子は母親がチカラに何かしていると思い自宅へ押しかける。
叔母は姉には言っても無駄だと帰るように言うも、突然背後から誰かに殴られる。

目を覚ますとそこにはチカラと母親と叔母が。
百子は母親たちは何か奇妙な液体を調合しているところを目にする。

そこで百子は母親たちの大きな秘密を目にするのだった…

・ひとこと
この話もかなり好き。
すでに他の作品でぶっ飛んでいると書いたが、この短編集の中ではこれが一番ぶっ飛んだ奇抜な作品。

【噂】

咲山みどりは深沢小学校の6年生で自分の見た目に自信を持っている。
クラスには双一と呼ばれる釘を常に加えている奇妙な同級生もいた。

双一はみどりに話しかけるも、彼女はいい噂のない双一を無視する。
ところがある日から、双一のいい噂ばかりを耳にするようになる。

そしてみどりが双一の事を好きだと言う噂が流れるも、それが自作自演だということをみんなにバラすのだった。
そして嘘つきになった双一はその場から逃げ出す。

次の日、掲示板に奇妙な写真が張り出される。
そこにはプロのファッションモデルの女性が写っているも、みんなが不気味だと口にする。

そしてそれから大柄な女が「私きれい?」と子供に聞いて、追いかけまわすという噂が流れるようになる。先生は口さけ女のような噂話だから気にするなと生徒たちにつげる。

そしてまた別のところでは、乙女ヶ淵の沼に入るときれいになるという噂も立つように。
みどりはライバルが意中の男の子に取られるのを恐れて乙女ヶ淵へ向かう。

するとそこには双一が。
噂は双一が流したものでみどりに復讐するためだった。
沼に入ったみどりの写真をとる双一。
すると突然沼の中から大きな影が現れて…

・ひとこと
伊藤潤二作品で、有名な「淵」と「双一」のコラボ。
ギャグ路線の「双一」とホラー全開の「淵」の組み合わせるとどうなるのか…は見てのお楽しみ。
「淵」はこれもハンターハンターの「淵?いやヒソカ」の元ネタのキャラですね。

【緩やかな別れ】

璃子は母を幼い頃に無くしたことから、この世で一番怖いことが、父親の死だった。

そんな璃子も大人になり、由緒ある戸倉家に嫁ぐことになった。
親の反対を押し切った結婚のせいか義母や義父は璃子にそっけない態度をとるのだった。

璃子は自分が至らぬせいだと思い、自分なりに一生懸命戸倉家の為に尽くす。
そして度々父親が亡くなる夢をみて目覚める。
夫は優しく介抱してくるのだった。

そしてある日、幽霊らしきものを見て腰を抜かす璃子。
夫に尋ねるとそれは先祖の「残像」だという。

戸倉家では亡くなった親族が念じる事で生前の姿を「残像」として残すことができると言う。
残像は幽霊でも実体があるわけではなく、おそらく錯覚だと夫は話す。
残像が家族の悲しみを埋めてくれるから、今も戸倉家では、残像を作り続けるんだと。
だが、残像は残るといっても、少しずつ劣化してしまい20年ほどで消えてしまうのだった。

璃子はもし父親が亡くなったら、父の残像も作れないかと夫に頼む。
夫は璃子の父親の件を家族に話すも意味がないと一蹴されるのだった。

冷たい態度を取る家族に耐えかねた璃子は泣いていると、夫以外では唯一優しい義妹の友香が慰めてくれる。璃子はありがとうと友香の頬に手をおくと、彼女が残像だったことに気がつく。

8年が経ってもまだよそよそしい義母や義父。
そしてとうとう夫にも女性の影が。

夫に問い詰める璃子、夫はいずれその女性と結婚するというのだった
それでも納得行かない璃子が夫に詰め寄ると夫はある事を口にする…

・ひとこと
この短編集の中では一番好きな話。
某映画みたいなオチ。
切ない終わり方だが、個人的にはとても好きだった。

魅入られた双一

・一言
短編。
「双一」×「富江」の組み合わせ。
短いがオチが好き。

最後に

2巻目である「歪」もとても面白かった。
個人的には

  • 墓標の町

    耳擦りする女

  • 肉色の怪

  • 緩やかな別れ

がおすすめです。
さすが伊藤潤二先生という作品集でした。

 

 

 

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