仮面ライダーBLACK SUN

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◆内容

時は2022年。国が人間と怪人の共存を掲げてから半世紀を経た、混沌の時代。
差別の撤廃を訴える若き人権活動家・和泉 葵は一人の男と出会う。
南光太郎──彼こそは次期創世王の候補、「ブラックサン」と呼ばれる存在であった。
50年の歴史に隠された創世王と怪人の真実。
そして、幽閉されしもう一人の創世王候補──シャドームーン=秋月信彦。
彼らの出会いと再会は、やがて大きなうねりとなって人々を飲み込んでいく。
公式サイトより

◆良かった点・こんな人向け

仮面ライダーを通して社会の問題について考えさせられる点
BLACKとシャドームーンのかっこよさ
キャストの選出
物語途中で(ほとんどの人が)驚くシーンがある
最後のシーン

◆悪かった点・こんな人には向かないかも

CGが微妙
中途半端な戦闘シーン
メインの2人と比べると他の怪人のクオリティが低い
最後のシーン

◆感想・ひとこと

Amazon Prime限定で見ることができる「仮面ライダーBlack Sun」
個人的にとても面白い作品だったと思う。
見ていて引き込まれる世界観があって「次は?」とあっという間に見終えてしまった。
そしてその一方で素晴らしいと思いつつ気になる点もちらほらあった

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◆テーマ性

テーマ性は見ていればわかるが「差別」について。
映像内では差別される対象が「怪人」だがこれを現実世界に置き換えて考えても社会が抱える問題と同じ構図になる。

◆怪人の強さ

今回出てくる怪人のほとんどが「下級怪人」で、人より力などは強いが、人間数人と戦ったら負けてしまう程の戦闘力(普通の人より弱い怪人もいる)しか持たない。
怪人は恐れられるほどは強くないというのが意外な設定だった。

◆怪人が社会に虐げられる理由は?

数が少ない怪人は、人々から差別の対象として忌み嫌われている。
臭いといって殴られたりしているシーンがあるが、臭いだけでそこまで虐げられるのか?
なぜ怪人が嫌われているのか?の理由が正直はっきりしなくて最後までスッキリしなかった。
あと、怪人がいる社会で怪人の起源が最後の方までわかっていないというのも設定としておかしい気がした。

◆差別への抗議の手段

ここが、一部視聴者にとって評価を下げている点みたいだ。

ここは見ていて少し違和感があった。
というのが、怪人たちへのヘイトスピーチや、怪人たちの抗議活動が「デモ」しかないのだ。

これは1970年代の学生運動のシーンならわかるが、現代になってもデモしか行われていない。

今ならSNSや動画を投稿するといった抗議方法も使えるはずで、SNSの影響力を軽視している
(きっと使われているという設定だが、映像内では言及されていない)
この辺りがちょっとリアリティにかける気がした。
(葵が国連に訴えかけたり動画配信をしているシーンは最初と最後だけしかない)

◆仮面ライダーの世界の問題=現実の世界問題として考えていい点と悪い点

差別に対する問題提起は現実の問題となんら変わらない。
怪人が人間の娯楽の犠牲になっている(現実の女性への被害など)というのも現実の問題とリンクして考えてもいいと思う。

肌の違いや生まれの違いで差別されるのはおかしい。
例えば肌の色が違っても人種によって人に備わる能力が違うなんてことはない
(個体差はあるがそれは肌の色だからではないのだ)

ただ、「怪人」は明らかに人と能力が違う。
例えば弱い怪人の雀でも空は飛べる。
人は自力では飛べない。

クジラ怪人は強いし、海を自在に泳げる。
人はあんな器用に泳げない。

(現実世界では)生まれや育ちで差別されるべきでない⇨人は生まれ持った能力が同じなのに差別されるのはおかしい
というロジックが成り立つが、怪人にこれをそのまま当てはめていいのか?と見ていて思ってしまった。
(例えば将来遺伝子操作で能力が優れた人が出てきたら…という可能性を孕んでいるが、今回の問題提起とは少し違う気がした)

◆日本が衰退している原因

日本が全体的に衰退していて暗いムードなのだがこの原因が説明されていない。
舞台が主に、下級怪人たちの場所だけかもしれないのではっきりしないが、その辺りの描写がもう少しあってもいいかと思った。

◆怪人がもたらす恩恵

怪人が虐げられる可能性は、もし現実に怪人が生まれたら十分あり得るなと思った。

だが逆に、怪人が生まれたことによるメリットもあるはずだ。
(例えば、怪人によっては体力が人より多いなったり、知性が高くなるといったメリットがあるはずで、それが社会に良い影響を及ぼしているはずなのだ)
こういったメリットにフォーカスするとテーマ性がブレるので省略しているかもしれないが、個人的には描写があってもいい気がした。

◆人選

俳優さんたちが良かったと思う。
メインの二人はとてもカッコよかったし、葵役の子も昔の志田未来を彷彿とさせていた。

また、有名な俳優だけを使うということもなく、ダイバーシティを考慮した人選というのが個人的にすごく良かったと思う。

あと個人的に今野さんの演技がチョー憎たらしくてすごく好きだった。
(もうすっかり俳優ですね)

◆どうしてもツッコミたかった点

どうしても3点ストーリー上「おかしくない?」となった点
①オリバーがゆかりからストーンを受け継ぐ理由が不明で無理やりな感じ(オリバーはキングストーンの意味を理解していなかった)
②葵の両親がキングストーンを託された理由が不明
③葵が最後の戦いに行く光太郎にビルゲニアの剣を渡さなかった理由

③に関しては秋月博士から創世王の倒し方を聞いているのに、なぜ光太郎に渡さないの?と。
それないと創世王倒せないって分かってたのに何で葵渡さないの??と、ここは明らかに変だろうと思った。
(実際、光太郎は創世王にトドメを刺すことができず、次の創世王にさせられてしまった)

◆最後のシーン

最後のシーンは
良かったと思った点と、
悪いと思った点が。

良かった点は、総理が自国の安全を理由に武力を持とうとしていた点に、対し葵たちが抵抗しようとするところ。
ここでは「怪人が」「人が」という構図で無くなっている。
総理の行いが「悪い」と思うから抵抗するという理由になっている。

一方で、(差別に対する暴力に対して抵抗する権利はある、が)その「武力」に対して(若い子供たちを自分たちの仲間に引き入れて、訓練を施し、人をこ○す方法を教え込み)「武力」で抵抗しようとしている点。
光太郎は自分の亡き後に次の「戦い」を葵に委ねたが本当にこの「戦い」方を望んだのだろうか?と思わされた。

◆怪人の中の格差

怪人の中にも上級怪人と呼ばれる強い怪人
下級怪人と呼ばれる社会的に弱い立場にいる怪人

差別に対する抗議を行う怪人たちの中に差別的意識があるという自己矛盾が内包されている。

◆「怪人のため」はどの怪人のため?

怪人たちが声を大にしていう「怪人のため」とはどの怪人のことか?
三神官や上級怪人たちは口では綺麗事をいっているが結局自分たちのことしか考えていない。
怪人同士の差別や保身という点では彼らも実に「人間らしい」のだ。

◆人間の悪いやつら、怪人の悪いやつら

人間でもいい人がいる
人間でも悪い人がいる
怪人でもいい怪人がいる
怪人でも悪い怪人がいる

怪人同士の差別や自己保身に走る怪人の「人間らしさ」。

そういう点をみれば、人だから、怪人だからと分ける意味なんて無いことがわかる。
ここが個人的に伝わったメッセージだった。

◆「怪人を終わらせる」

光太郎や信彦が創世王を倒して怪人の悲劇を終わらせようとしたこと
総理が怪人を終わらせると発言したこと

前者と後者では意味と重みが全く違う。

だが、実際に怪人といっても色々な怪人がいて、それぞれの生活を持っている。
それを個人が勝手に「種の存続」という重大な決定をしていいのか?と思ってしまった。
(苦悩はわかるのだが、怪人でも幸せに生活している人もいるし、成功している人もいるはずなので)

◆CG

CGはやはりハリウッドなどと比べると少しチープな感じがした。
重厚で重いテーマを扱っているのでこの辺りのクオリティは上がって欲しいなと思った。

◆戦闘シーン

戦闘シーンが中途半端に感じた。
たとえば光太郎がバッタになって相手に噛み付くシーンなんかは野生感があってアリ(まぁバッタなんですが)なのだが、
他の戦うシーンはリアルの喧嘩っぽくするのか、よりアクションっぽくするのかどちらかに振り切って欲しかった。
(実際の殴り合いをリルに寄せるなら、数発で終わるはず)

◆怪人のクオリティ

BLACK SUMとシャドームーンはバッタ男の姿も、覚醒した後もめちゃくちゃカッコよかった。
特にシャドームーンは子供の頃から好きだったが、メカ感は無くなっていたがそれでも好きなデザインだった。

一方で一部怪人のクオリティが微妙なのは残念。

◆光太郎と信彦の50年

50年を生きた光太郎と
50年をただ生きた信彦
この二人の対比というのがすごく印象的で良かった。

◆さいごに

良い点も悪い点もたくさんあって見応えのある作品だった。
個人的には色々気になる点も書いた(書かずにいられなかった)けれど、おすすめです。
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